祝辞

| 原 勝則氏 (厚生労働省 老健局長)
| 袖井 孝子氏 (お茶の水女子大学名誉教授・シニア社会学会会長)
| 古谷野 亘氏 (聖学院大学教授) | 西村 敏行氏 (三菱金曜会事務局長)

原 勝則氏(厚生労働省 老健局長)

ダイヤ高齢社会研究財団は、高齢社会、高齢者問題全般を調査・研究する機関として1993年に設立され、以来20年にわたり、高齢社会における「健康」「経済」「生きがい」などについて、実践的な調査・研究を推進し、その活動成果を広く社会に普及するために取り組まれてきたことについて、関係者の方々のこれまでのたゆまないご尽力に対して心より敬意を表すとともに、ここに設立20周年を迎えたことに対し、心からお祝い申し上げます。

今後の高齢化の進展、世帯構成や地域の変化を踏まえると、団塊の世代が75歳以上となる2025年を目途に、重度な要介護状態となっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるよう、医療・介護・予防・住まい・生活支援が一体的に提供される地域包括ケアシステムを構築することが大変重要となってまいります。地域包括ケアシステムを構築していくためには、市町村が中心となって地域の住民や関係者の方々と協働していくことが不可欠です。

これからのわが国においては、高齢社会をより活力あるものになるために、貴財団の取り組みやその成果は重要なものになってまいります。今後も大いにその力を発揮され、貢献されることを心より祈念いたしまして、お祝いの言葉といたします。

厚生労働省 老健局長
原 勝則氏

袖井 孝子氏(お茶の水女子大学名誉教授・一般社団法人シニア社会学会会長)

これまでの20年、これからの20年

スタッフも少なく、予算規模も小さな研究組織が、20年あまりも活動を続けてこられたことに、何よりも賞讃の声を届けたい。財団が実施してきた活動は多岐にわたるが、私がもっとも評価したいのは、社会老年学データーベースDiaLを創設したことである。本来、こうした作業は、老年社会科学会が実施すべきことではあるが、人材と予算の制約のために実現することができなかった。このデータベースのおかげで、どれだけ学部学生や大学院生、そして研究者が助けられたかわからない。最初は、なかなか認知されなかったが、最近では、かなり認知度が上がってきたことを喜ばしく思う。

これからの20年は、公益法人としての誇りと責任をもって活動を続けてほしい。三菱系の企業を会員としてスタートした財団ではあるが、当初より、多彩な活動を不特定多数の人びとに対して提供しており、今後はさらに活動の幅を広げることが期待される。これからは、公益法人であることのメリットを活かして、多様な組織・団体、そして個人からの寄付を募ることもできるだろう。

超高齢社会に向けて解決すべき課題は山積している。高齢になっても、心身ともに安定したQOLの高い生活を営めるような社会の実現に向けて、研究や活動を進めていただきたいと心より願っている。

お茶の水女子大学名誉教授
一般社団法人シニア社会学会会長
袖井 孝子氏

古谷野 亘氏(聖学院大学教授)

創立20周年おめでとうございます。

大学でも国公立の研究所でもない民間の研究機関が、20年の長きにわたって学術的な活動を続けてきた事実は、特筆されるべきことであるといわなければなりません。先見性と優れた着想、そしてたゆまぬ努力の結晶であると思います。財団の創立以前に始められた訪問介護に関する研究はまさに先見性の表れでしょうし、社会老年学文献データベースDiaLは着想のよさと根気強い取り組みの成果です。

学術研究の目的は真理の探究ですが、実際には、研究にも流行り廃りがありますし、研究の進展より現実の変化の方が早いこともあります。訪問介護に関する研究は、介護保険制度の施行にともなう現実の変化の方が早かった例であるかもしれません。研究を進める早さと広がりでは大きな研究機関が勝ります。ダイヤ高齢社会研究財団のような小規模の研究機関にとっては、流行に左右されない独自の研究領域・課題をもつことが必要です。

三菱グループという巨大な民間企業群をバックにもつ研究財団には、企業退職高齢者のライフスタイルという恰好の領域・課題があります。21世紀の都市化した超高齢社会における企業退職高齢者の生活と意識に関する研究は、広大な未開拓の領域であり、そこには多くの有意義な研究課題が隠されていると思われます。この方面での先見性をもった研究を進めていただけることを期待し、また念願しています。

聖学院大学教授
古谷野 亘氏

西村 敏行氏(三菱金曜会事務局長)

高齢社会って何?

そもそも「高齢社会」と特別視するのは、人生60年時代の高齢者がマイノリテイーであった時代の遺物ではないか。現在は平均寿命80歳超で90年の人生を前提に人生設計することが求められる。また、近い将来高齢者がマジョリテイーの時代が到来し、従来の様に社会的弱者として特別視することは出来なくなろう。こうした社会の趨勢に対し、年金受給年齢の引き上げ、雇用延長など遅ればせながら対応し始めたが、100歳を越える5万人の約2割が健常者という現状から見ると、根本的に考え方を改める必要がある。リタイアー後10年程度であれば余熱を年金で賄うことが可能であったが、これからは20〜30年を余熱で年金生活というのは本人の人生の充実からも国の財政上の制約からも問題であろう。そこでリタイアー後の20〜30年は雇用延長という概念でなく、高齢者用の仕事を創出し、それなりのパフォーマンスに対し相応のペイで報いることを考えたい。謂わば人生二期作ではなく二毛作である。リタイアー後の生活は多くは住宅負担や教育負担は無く一方で社会保障は不十分ながらある程度準備されており、身の丈に合った生活であれば然程生活費は要らない。年金は現役世代の負担と考えればこれは子世代、孫世代へ還元し、日々の生活はリタイアー後の相応の仕事の報酬で賄うことが出来れば世代間格差の解消にも繋がる。そうすれば、高齢社会が特別な問題でなく当たり前の社会になる近い将来でも全員が充実した人生を送ることが出来ると願いたい。ダイヤ高齢社会研究財団には斯かる視点から益々期待したい。

三菱金曜会事務局長
西村 敏行氏