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2022年度

都市高齢者の社会関係周縁部に関する研究

研究者
澤岡詩野
共同研究者
古谷野亘(聖学院大学)・西村昌記(東海大学)・菅原育子(東京大学)
研究期間
2006~2023年度
研究概要

職住分離が進み、社会関係が希薄だといわれる都市部においては、密度濃いつながりではなく、友人未満で知り合い以上の他者とのゆるやかな関係を前提にした地域づくりが求められている。しかし、日常生活のサポートの提供者になりにくい親族以外の他者については、これまでの研究でその実態が、ほとんど明らかにされてこなかった。

本研究では、社会関係の周縁部に位置付けられる「ゆるやかな関係」に注目し、成立・発展のメカニズム、並びにそれらの関係が当該高齢者に及ぼしている影響を明らかにし、つながりの希薄化に悩む地域に対して新たな地域づくりのあり方を提示することを目的に、2006年から知見を積み重ねている。

本年度は、これまでのフィールド調査でみえてきた、社会的孤立の抑止や地域活動への参加のきっかけといった「ゆるやかなつながり」がもたらす効用について、参与観察を継続することで周縁部の関係を質的に深掘りする。参与観察とインタビュー調査を通じ、ゆるやかなつながりのなかでも「馴染んだ関係」として高齢者に認識されている他者の実態と成立過程を明らかにしていく。

加えて、新型コロナウィルス感染終息後を見据え、これまで当該分野の専門家と共に開発してきた「ゆるやかなつながり」の実態や効用を測定する指標を用いた大規模調査の実施に向けた準備を進める。

得られた知見は、関連学会で査読付き論文としての発表に留まらず、新型コロナの影響で弱体化してしまった支え合いや地域のつながりづくりへの新たなヒントとして、自治体、社会福祉協議会、地域包括支援センター、地域組織、社会活動団体などに積極的に提示していく。特に、コロナ禍の地域支援のあり方に悩む市区町村の職員や専門職への研修などの場で、積極的に知見を提供していく。

関連する成果

[論文]

  • 澤岡詩野:「介護予防を目的とした高齢者の自主グループ活動で生じる課題;横浜市元気づくりステーション事業で世話役を担う高齢者の語りから」(シニア社会学会機関誌『エイジレスフォーラム』第18号:査読付、2020年6月)
  • 澤岡詩野,渡邉大輔,中島民恵子,大上真一:「日本の都市高齢者の援助行動と被援助志向性:よこはまシニアボランティアポイント制度登録者における検討」(日本老年社会科学会「老年社会科学」への原著論文投稿、2020年4月)
  • 長田斎・古谷野亘・安藤雄一・澤岡詩野・甲斐一郎:大都市居住傘寿者のコホート調査:追跡対象者の特性と4年6カ月後の生命予後および介護・医療サービスの利用状況,厚生の指標,67(1),1-8(2020)
  • 澤岡詩野・渡邉大輔・中島民恵子・大上真一:都市高齢者のボランティア活動継続への意向に関する分析:よこはまシニアボランティアポイント制度登録者における検討,応用老年学,11(1),61-70(2017)
  • 古谷野亘・澤岡詩野・菅原育子・西村昌記:高齢者が日常生活において交流している他者との関係, 老年社会科学,38(3),345-350(2016)
  • 澤岡詩野・渡邉大輔・中島民恵子・大上真一:「都市高齢者の近隣との関わり方と支え合いへの意識:非常時と日常における近隣への意識に着目して」,老年社会科学,37(3),306-315(2015)
  • 澤岡詩野・古谷野亘:「社会関係の研究において用いられている非親族との関係の指標;日本の高齢者を対象とした最近の量的実証研究のレビュー」, 老年社会科学, 33(1), 47-59 (2011)
  • 澤岡詩野・古谷野亘・本田亜起子:「都市のひとり暮らし後期高齢者における他者との日常的交流」, 老年社会科学、34(1)、39-45(2012)

[学会]

  • 澤岡詩野・渡邉大輔・中島民恵子・松岡洋子・大上真一:「新型コロナウィルス流行と都市部高齢男性の社会生活:交流や社会活動の手段としてのインターネットの位置づけ」第16回日本応用老年学会大会(2021.11 オンライン)
  • 澤岡詩野、渡邊大輔、中島民恵子、大上真一:「都市高齢者の地域活動への参加と近所の人とのあいさつの関連:横浜プロダクティブ・エイジング調査から」日本老年社会科学会第63回大会(2021.6 オンライン)
  • 澤岡詩野:「シニアボランティアポイント制度登録者の近隣との日常の支え合い意識と地域活動の関連」第79回日本公衆衛生学会総会(2020/10/20-22、オンライン)
  • 澤岡詩野・渡邉大輔・中島民恵子・大上真一:「都市高齢者のボランティア活動継続への意向と被援助志向性」日本老年社会科学会第62回大会(Vol.42 No.2誌上発表)(2020/6)
  • 澤岡詩野・渡邉大輔・中島民恵子・大上 真一:「高齢者の自主グループの『自主運営』と『主体的なかかわり』を支えるうえで生じる課題:横浜市元気づくりステーション事業に関わる専門職の語りから」第14回日本応用老年学会大会 (2019/10/19-20、京都府)
  • 澤岡詩野・古谷野亘・安藤雄一・長田斎・甲斐一郎:「都市部傘寿者が70歳以上に新たにはじめた活動の有無と健康長寿との関連-杉並区健康長寿モニター事業-」第61回日本老年社会科学会大会(2019/6/6-8,宮城県)
  • 古谷野亘・長田斎・安藤雄一・澤岡詩野・甲斐一郎:「都市80歳高齢者における移動能力の障害とその後の医療費・介護サービス点数-杉並区健康長寿モニター事業-」第61回日本老年社会科学会大会(2019/6/6-8,宮城県)
  • 澤岡詩野:異性の友人のいる高齢者の特性. 第59回日本老年社会科学会大会(2017/06)
  • 澤岡詩野:パネルディスカッション「地域に生き、地域を創る「住まい方」とは?-地域それぞれの主体性を高めた地域包括ケアシステムを創るにはー」. 第59回日本老年社会科学会大会(2017/06)
  • 中島民恵子・渡邉大輔・澤岡詩野・大上真一:What approaches encourage the elderly to do volunteer activities? What kinds of group activities for the elderly promote an interest in more community involvement?. アメリカ老年社会学会(2016/11)
  • 渡邉大輔・澤岡詩野:ボランティアポイントプログラムは介護予防効果を持つのか:横浜での2年後縦断調査. 第11回日本応用老年学会総会(2016/10)
  • 澤岡詩野・渡邉大輔・中島民恵子・大上真一:都市高齢者のボランティア活動と継続意識;横浜市ボランティアポイント登録者における検討. 第58回日本老年社会科学会大会(2016/06)
  • 古谷野亘・澤岡詩野・菅原育子・西村昌記:ミニシンポジウム「いま改めて考える高齢者の社会関係 - 研究の到達点とこれから」において「高齢者が日常生活において交流している他者との関係;その分類と把握」を講演. 第58回日本老年社会科学会大会(2016/06)
  • 澤岡詩野・渡邊大輔・中島民恵子:都市高齢者の近隣に対する意識と社会活動~横浜プロダクティブ・エイジング調査から~.第57回日本老年社会科学会(2015/06)
  • 渡邊大輔・澤岡詩野:横浜プロダクティブ・エイジング調査報告(その1):介護支援ボランティアポイント制度は誰のボランティア参加を誘引するのか?. 第9回日本応用老年学会(2014/10)
  • 澤岡詩野・渡邊大輔:横浜プロダクティブ・エイジング調査報告(その2) ~町内会・自治会活動への参加と近隣に対する意識~.第9回日本応用老年学会(2014/10)
  • 澤岡詩野:「都市高齢者の日常的な他者との交流と居場所」 小講演Ⅰ 第55回日本老年社会科学会(2013/06)

[寄稿等]

  • 澤岡詩野:「世代間の『チカラの循環』がうみだす豊かな地域」(5月)道友社『あらきとうりょう』(5月号特集「世代間ギャップを超えて」)
  • 松岡洋子・渡辺大輔・大上真一・澤岡詩野・中島民恵子:「公営住宅住民と新型コロナ危機への対応:住民参加型通所事業(総合事業)への参加者の体験を通して」(10月)東信堂『居住福祉研究31』(特集 提言 新型コロナ危機と居住福祉の課題Ⅱ)「コロナ禍から活動のヒントをさぐる!」横浜市都筑区社会福祉協議会のリーフレット(監修と執筆)(2022年3月)
  • 澤岡詩野:「『活きる』とはプロダクティブなつながりをもつこと」建築保全センター機関誌「Re:」№209(2021年1月)
  • 澤岡詩野:「紡いできたつながりをとだえさせないために今できることは?」渋谷区社協のふれあい・いきいきサロン団体向け通信(12月号)
  • 澤岡詩野:「“卒・年賀状“で本当に大切なつながりを見つけませんか?」週刊女性セブン(11/26号「今週の取材ノート」)
  • 澤岡詩野:「年賀状やめ方にひと工夫」欄 読売新聞朝刊(11/4)
  • 澤岡詩野:「百年人生を生きるコロナ禍で広がる 新しい旅の形」毎日新聞電子版(2020年9月)
  • 澤岡詩野:「地域で一歩を踏み出すためのヒント」広報よこはま青葉区版9月号
  • 澤岡詩野:「『オンラインサロン』で孤立防止」毎日新聞大阪版夕刊(2020/6/24)
  • 澤岡詩野:「ネット環境、高齢者にこそ」日本経済新聞・“私見宅見”欄(2020/6/8)
  • 澤岡詩野:日本経済新聞夕刊・セカンドステージ「地域活動 気楽にデビュー」欄(2020/5/21)
  • 澤岡詩野:「高齢者のZoomお茶会の可能性」日本経済新聞(2020/4/30)
  • 澤岡詩野:「日常のなかで『つながり』のタネまきをしてみよう!」あざみ野STYLE vol.41“西川りゅうじんの健康対談”(2020年3月)
  • 澤岡詩野:「後悔しない『年賀状終活』のすすめ」、北海道新聞夕刊「編集長から」欄(2019/11/22)、読売新聞朝刊生活面 (2019/11/28)
  • 澤岡詩野:「高齢者の社会活動の特徴とは?求められるのは自立を促す支援」三菱食品株式会社『MSスクエア』2019年9月号(インタビュー記事)
  • 澤岡詩野:「生き・粋・活きシニア」北海道新聞(2017年5月~2019年3月)
  • 澤岡詩野:「大衆長寿社会を豊かに生きる「ゆるやかなつながり」と「地域コミュニティ」の在り方」.「社会教育」2019年2月号(12-17)
  • 澤岡詩野:巻頭言「次世代を育むジィジとバァバの力」アニマート17号(2016.3月発行)
  • 澤岡詩野:コラム「人生100年の居場所学」時事通信から週1回、全14回配信(2015年1~3月)。岐阜新聞、西日本新聞、釧路新聞、静岡新聞などに掲載
  • 澤岡詩野:「リタイヤメント後に第三の居場所を創る意味と課題」家計経済研究105号(2015.1月発行)
  • 澤岡詩野:特集論文「リタイヤメント後に第三の居場所を創る意味と課題」季刊家計経済研究37-46,第105号
  • 澤岡詩野:「いきいきセカンドライフ(生きがい探しに第三の居場所づくり」くらしの豆知識2015 (2014.9月発行)

[書籍]

  • 澤岡詩野:「第3章 住民「自ら」が叶える七〇歳からの夢の住まい方」『横浜の市民活動と地域自治(まちづくりブックレット)』東信堂(2021年12月)
  • 澤岡詩野:後悔しない「年賀状終活」のすすめ、カナリアコミュニケーションズ(2019)
  • 澤岡詩野:荻窪家族プロジェクトの特徴と意味(ソフトから見て),背景・建設の歩み, 新しい高齢者居住、参加のデザイン;地域開放型・多世代・シェアという新しい高齢者居住;専門家・賛同者としての関わり(荻窪家族プロジェクト編著)荻窪家族プロジェクト物語;住む人・使う人・地域の人みんなでつくり多世代で暮らす新たな住まい方の提案,12-18,46-56,156-169,萬書房(2016)
  • 澤岡詩野:住民が担うまちづくり(袖井孝子編著)「地方創生」へのまちづくり・ひとづくり,141-156,ミネルヴァ書房(2016)

担当者:澤岡 詩野(さわおか しの)研究員のご紹介ページへ研究員ブログへ

(公財)ダイヤ高齢社会研究財団 主任研究員

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